屋根は何で選べばいいの?
家を建てる上で、最も欠かせないのが雨を凌ぐ屋根です。そもそも「屋根」という言葉の由来は、昔の家づくりの際、地面近くまで覆う構造から「屋根」と名付けられたと言われます。現在の日本の住宅に欠かせない屋根には様々な素材と形状があり、選び方が重要です。今回はその屋根についてお話したいと思います。
目次
(1)スレート
(2)陶器瓦
(3)セメント瓦(コンクリート瓦)
(4)ガルバリウム鋼板
(5)エスジーエル(SGL)鋼板
(6)ジンカリウム鋼板
(7)トタン
(8)アスファルトシングル
(9)銅板
(10)ステンレス
(11)天然スレート(石)
2)屋根の形状について
(1)切妻屋根(きりづまやね)
(2)寄棟屋根(よせむねやね)
(3)片流れ屋根(かたながれやね)
(4)陸屋根(ろくやね)
(5)マンサード屋根
(6)越屋根(こしやね)
(7)入母屋屋根(いりもややね)
(8)方形屋根(ほうぎょうやね)
3)屋根を選ぶ際の注意点やポイント
(1)耐久性と耐用年数
(2)気候・地域の特性に合った素材
(3)メンテナンスの頻度や手間
(4)断熱性・遮音性
(5)コストとランニングコストのバランス
(6)デザイン性や外観の調和
(7)施工業者の技術力
(8)リフォームや交換のしやすさ
4)まとめ
1)屋根の素材について
住宅の屋根に使われる素材はさまざまで、それぞれ異なる特性を持っています。屋根の素材を適切に選ぶことで、建物の耐久性や機能性が向上します。以下は、代表的な屋根材の種類とその特徴です。
(1)スレート
スレートは、セメントを薄い板状に成形したもので、住宅の屋根に広く使われています。色が豊富で軽量であるため、新築住宅において人気の高い素材です。スレート屋根は費用が比較的安く、設置がしやすい点も特徴です。
スレートの利点としては、軽量であるため住宅全体に負荷をかけにくく、耐震性が向上することが挙げられます。また、色やデザインが豊富で、住宅の外観に合わせた選択が可能です。しかし、スレートは定期的なメンテナンスが必要で、10~15年ごとに再塗装が求められます。寒冷地では凍害に弱い傾向があるため、使用環境に合わせた定期的な点検が推奨されます。
(2)陶器瓦
陶器瓦は、粘土を成形し焼成した瓦で、日本の伝統的な屋根材として知られています。特に、釉薬を使った「本瓦」は、美しさと耐久性で長い歴史があります。陶器瓦の特徴は、耐火性や耐水性、防音性が高く、四季の変化が激しい日本の気候に適した素材であることです。
陶器瓦は耐久性が高く、50年から60年以上の寿命を持つことが多いです。また、断熱性があるため、夏は涼しく冬は暖かいという特徴があります。しかし、陶器瓦は重く、施工費用も他の素材に比べて高めです。地震の多い地域では、建物にかかる負荷を考慮する必要があります。また、落下のリスクがあるため、定期的な点検と修繕が推奨されます。
(3)セメント瓦(コンクリート瓦)
セメント瓦は、セメントと川砂を混ぜて成形したもので、色や形状が多彩なデザインが可能です。セメント瓦は耐火性があるため、安全性の高い素材とされていますが、現在は生産が減少しています。
セメント瓦の利点は、デザインの自由度が高いことです。様々な色や形のバリエーションがあり、外観に合わせた選択が可能です。しかし、衝撃に弱く、塗膜が剥がれやすいため、10年ごとに再塗装が必要です。また、耐用年数は30~40年で、メンテナンスが他の瓦に比べて多めである点も留意が必要です。
(4)ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、アルミニウム、亜鉛、シリコンを組み合わせた金属素材です。非常に軽量で、耐蝕性が高く、日本では金属屋根として人気のある素材です。金属素材であるため、コストパフォーマンスも良好で、軽量であるため地震に強いという利点があります。
ガルバリウム鋼板の特徴は、防水性や耐震性が高い点です。加工が容易で、施工の柔軟性も高く、メンテナンスの手間を減らすことが可能です。ただし、断熱性や遮音性はやや低いので、寒冷地や騒音が気になる場所では、追加の断熱材などの対策が推奨されます。また、15~20年に一度の再塗装や定期点検が必要です。
(5)エスジーエル(SGL)鋼板
ガルバニウム鋼板をさらに性能向上したガルバニウム合板の仲間で、エスジーエル(SGL)鋼板は表面処理めっき鋼板の最高峰といわれ、アルミと亜鉛で作られたガルバリウム鋼板のメッキにマグネシウムを添加することで、ガルバリウム鋼板の約3倍の耐食性を実現しています。ガルバリウム鋼板に変わり錆びにくく長持ちする為、次世代の屋根材として非常に人気があり、業界でも注目の的になっています。沿岸部のエリアにも塩害対策が出来るので非常に人気です。
(6)ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に石粒を吹き付けたもので、さらに耐蝕性が向上した素材です。塩害に強く、海沿いの住宅に適しており、耐熱性や防音性が高いことから快適な住環境を提供します。
ジンカリウム鋼板は、耐震性や耐蝕性が高く、長持ちするため、メンテナンスフリーで使用できる点が魅力です。ただし、輸入素材が多いため、価格が高くなる傾向があります。耐用年数は30~50年で、メンテナンスが少なく済むため、長期的なコストパフォーマンスに優れています。
(7)トタン
トタンは、鉄板に亜鉛メッキを施したもので、安価で軽量です。昔の住宅でよく使われていましたが、耐久性が低いため、最近では住宅で使用されることが少なくなりました。
トタンのメリットは、初期費用が安く、施工が簡単である点です。しかし、耐用年数は10~20年と短く、5年ごとに再塗装が必要です。錆びやすく、塗膜が剥がれるリスクがあるため、こまめなメンテナンスが求められます。
(8)アスファルトシングル
アスファルトシングルは、ガラスファイバーにアスファルトを塗り、表面に石粒を吹き付けたシート状の屋根材です。北米では広く普及しており、日本では最近増えつつあります。
アスファルトシングルは、防水性や防音性に優れ、メンテナンスのサイクルが長いことが特徴です。ただし、施工費が高く、日本での普及率はまだ低いです。耐用年数は20~30年で、10~15年ごとに再塗装が必要です。
(9)銅板
銅板は、耐久性や耐震性が高く、古くから神社や寺院で使われています。銅は酸化すると緑青を生じ、美しい色合いを持ちます。
銅板は耐久性が高く、メンテナンスがほぼ不要です。非常に長寿命で、60年以上使用できることが一般的です。ただし、価格が非常に高く、施工にも専門的な技術が必要なため、一般住宅ではあまり使用されません。
(10)ステンレス
ステンレスは、クロムやニッケルを含む合金で、錆びにくく耐久性に優れています。ガルバリウム鋼板よりも耐久性が高く、サビへの耐性が高いのが特徴です。
ステンレス屋根は軽量で、メンテナンスコストが低いことが利点です。ただし、施工費用は高く、断熱性と防音性が低いため、追加の断熱材を使用することが一般的です。紫外線の影響を受けやすく、経年劣化による色あせに注意が必要です。
(11)天然スレート(石)
天然スレートは、粘板岩を使用した石の屋根で、非常に耐久性が高く、自然な風合いが魅力です。フリーメンテナンスで、長持ちする素材ですが、価格が高いため、一般住宅よりも歴史的建造物(東京駅)や高級住宅、東北地方の一部で使われることが多いです。
2)屋根の形状について
屋根の形状は、建物のデザインや構造、気候に応じてさまざまな種類があります。ここでは、代表的な屋根の形状についてわかりやすく説明いたします。
(1)切妻屋根(きりづまやね)
切妻屋根は、2つの斜面が山形に組み合わさり、建物の両端が三角形になる形の屋根です。日本の住宅では最も一般的な形状です。
- 特徴:雨水を効率よく流せるため、雨が多い地域でも採用されやすい。
- メリット:シンプルな構造で施工が容易。メンテナンスや修理も簡単。
- デメリット:強風に弱い面があり、台風の多い地域では補強が必要。
(2)寄棟屋根(よせむねやね)
寄棟屋根は、4方向に傾斜がついた屋根で、屋根の四方がすべて斜面で構成されています。寺院や和風建築でもよく見られる屋根形状です。
- 特徴:屋根の四面が傾斜しているため、強風や台風にも強い。
- メリット:雨水が流れやすく、風にも強いため、台風が多い地域でも安心。
- デメリット:切妻屋根に比べて施工が複雑で、建設費用が高くなる傾向がある。
(3)片流れ屋根(かたながれやね)
片流れ屋根は、1方向に傾斜した屋根で、モダンな住宅や店舗でよく使用されるスタイリッシュな屋根形状です。
- 特徴:雨水が一方向に流れるため、集水がしやすい。
- メリット:構造がシンプルで、デザイン性が高い。また、屋根の片側を高くすることで日光を多く取り入れられる。
- デメリット:片側にのみ負担がかかりやすく、構造を補強する必要がある場合がある。
(4)陸屋根(ろくやね)
陸屋根は、平らな形状の屋根で、ビルやマンションなどの集合住宅に多く見られます。日本では屋上を利用するために採用されることも多いです。
- 特徴:平らな形なので、屋上をベランダや庭として使える。
- メリット:屋根面を有効活用できるため、物干しや庭として活用可能。
- デメリット:水はけが悪く、定期的に防水工事が必要。また、積雪が多い地域には不向き。
(5)マンサード屋根
マンサード屋根は、上部が緩やかで、下部が急勾配になった2段階の傾斜を持つ屋根で、フランスの伝統的な建物に由来しています。
- 特徴:屋根裏のスペースを有効活用できるため、居住空間を増やせる。
- メリット:勾配が強いため、雨水を効率よく流せる。また、屋根裏を部屋として利用できる。
- デメリット:施工が複雑で、建設費用が高くなる傾向がある。
(6)越屋根(こしやね)
越屋根は、通常の屋根の上に小さな屋根を設置する構造です。古くから寺社建築や蔵などで使われており、通気性が高いのが特徴です。
- 特徴:空気の通り道を確保できるため、屋根内部がこもりにくい。
- メリット:屋根裏の換気や排熱に役立つ。伝統的な建物の装飾性を高めることができる。
- デメリット:施工が難しく、建築費用が高くなることが多い。
(7)入母屋屋根(いりもややね)
入母屋屋根は、切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせた形状です。日本の神社仏閣や、伝統的な住宅によく見られます。
- 特徴:重厚感があり、風格のあるデザイン。
- メリット:風通しが良く、雨水を効率よく流せる。和風建築に適している。
- デメリット:複雑な構造のため、施工に高度な技術が必要。建設費用も高くなる。
(8)方形屋根(ほうぎょうやね)
方形屋根は、四方に均等に傾斜した屋根形状で、四角い建物の屋根に使われることが多いです。
- 特徴:シンプルなデザインで、四方から均等に雨水が流れる。
- メリット:四方からの荷重が均等にかかるため、耐風性が高い。
- デメリット:屋根の面積が広くなるため、材料費がかかりやすい。
このように、屋根形状はそれぞれ特徴があり、メリット・デメリットがあります。素材や形状に応じた特性を理解し、予算や気候に合った屋根を選ぶことが大切です。
3)屋根を選ぶ際の注意点やポイント
住宅の屋根を選ぶ際には、以下のような注意点やポイントを考慮すると、建物のデザインや耐久性、維持費などをバランスよく決められます。屋根は長期間メンテナンスが必要ないものが理想ですが、選択を間違えると後々コストや労力がかかる場合もあります。下記に重要なポイントを解説します。
(1)耐久性と耐用年数
屋根材は種類によって耐用年数が異なります。例えば、陶器瓦のように50年以上の耐用年数があるものもあれば、スレート屋根のように30年程度のものもあります。長期的な視点でメンテナンスの手間や費用を考え、耐久性の高い屋根材を選ぶのも一つの方法です。
- 長持ちさせたい場合:陶器瓦、銅板、天然スレートなど耐久性が高い素材が適しています。
- 初期費用を抑えたい場合:スレート、アスファルトシングル、ガルバリウム鋼板など、比較的安価な屋根材を検討すると良いでしょう。
(2)気候・地域の特性に合った素材
屋根は、気候や地域により適した素材が異なります。特に日本は多湿で台風も多いため、風雨や湿気に強い素材が求められます。地域特性をよく考慮することで、劣化や破損のリスクを減らせます。
- 台風が多い地域:耐風性が高く、雨水が効率よく流れる形状(寄棟屋根、方形屋根)や、重さがあって風で飛ばされにくい陶器瓦などが適しています。
- 寒冷地や雪が多い地域:積雪の重みに耐えやすい素材(例えば、スレートやトタンなど)や、雪が滑り落ちやすい形状の屋根を選ぶと良いです。
- 沿岸部で塩害を受けやすい地域:錆びにくく長持ちする素材(ガルバリウム鋼板を進化させたエスジーエル鋼板)が耐食性に優れていて長持ちするのでお勧めです。
(3)メンテナンスの頻度や手間
屋根は風雨や紫外線にさらされるため、一定のメンテナンスが不可欠です。メンテナンスの頻度は素材によって異なり、再塗装が定期的に必要なものもあります。メンテナンスの手間をかけたくない場合は、耐久性が高くメンテナンスが少ない素材が向いています。
- メンテナンスの少ない屋根材:陶器瓦や銅板は耐用年数が長く、メンテナンスが少なくて済みます。
- こまめなメンテナンスが必要な屋根材:スレートやガルバリウム鋼板は再塗装が定期的に必要です。
(4)断熱性・遮音性
屋根は外気温の影響を受けやすく、夏の暑さや冬の寒さに直接影響します。断熱性能が高い屋根材を選ぶと、室内の温度が安定しやすくなり、冷暖房費用を抑えられます。また、遮音性も考慮しておくと、屋外の騒音を抑えることができ、静かな室内環境が保てます。
- 断熱性・遮音性が高い屋根材:陶器瓦、ジンカリウム鋼板、アスファルトシングルなど。
- 断熱性・遮音性が低い屋根材:トタンやガルバリウム鋼板は薄いため、音が響きやすく、断熱材の併用が推奨されます。
(5)コストとランニングコストのバランス
屋根材には、初期費用が高いものもありますが、耐用年数が長くメンテナンスが少ないものも多くあります。最初のコストだけでなく、長期的なランニングコストも考慮すると、後の維持費を抑えられます。
- 初期費用重視:スレート、アスファルトシングルなどは比較的安価で、施工費も抑えられます。
- 長期的なランニングコスト重視:天然スレートや陶器瓦は初期費用が高くても、長持ちし、メンテナンスが少ないため結果的にコスパが良いです。
(6)デザイン性や外観の調和
屋根は住宅の外観デザインを決定づける重要な部分です。伝統的な家屋には陶器瓦や天然スレートがよく似合いますし、モダンなデザインにはスレートやガルバリウム鋼板が合います。周囲の景観や住宅のデザインに合わせて選ぶと、統一感のある外観になります。
(7)施工業者の技術力
屋根材によっては、施工に高度な技術が必要なものもあります。特にジンカリウム鋼板や天然スレートなどは、施工が不適切だと雨漏りや屋根材の劣化が早まることもあります。信頼できる業者に依頼し、施工後の保証があるかも確認しておくと安心です。
(8)リフォームや交換のしやすさ
屋根は将来的にリフォームや交換が必要になることもあります。施工のしやすさや、屋根材の入手のしやすさも考慮しておくと、いざというときに迅速に対応できます。例えばスレート屋根は、再塗装や交換がしやすい素材です。
4)まとめ
如何でしたでしょうか?上記の通り、色々とお話させていただきました。
屋根は雨風を防ぐだけでなく、デザイン、耐用年数、コストなど様々なので、特徴やメリット、デメリットなどは建築会社に相談しながら自身の希望の屋根を採用していきましょう。昨今の屋根の技術革新は目覚ましいので、この辺りは工務店や専門知識の高い方に相談することをお勧めいたします。
屋根だけに留まらず当社にご相談がある場合には、お気兼ねなくご連絡ください。
この記事を書いた人
ease住建 内野 浩仁
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